ピアノの調律

ピアノには定期的な調律(メンテナンス)が必要です。

それは長く調律をしていなかったり、日々のピアノを弾く時間が多い場合などに、特に音や調整などのバランスが狂ってきてしまうからです。

ピアノは全体で張力としては約20トン、ピアノ弦の本数に関しては約230本前後張られています。 これらの弦が時間をかけて緩んできたり、弾くことによって振動があたえられたり、温度や湿度変化により響板と呼ばれる部分が膨張あるいは収縮してしまい、弦の張力に影響をあたえてしまうため、狂ってきてしまいます。 そして、これらは均一に狂うわけではないため、高い音もあれば低い音もあるといったような感じにバランスが崩れてきます。
このような状態で一気に弦を引っ張ってしまうと弦が切れてしまったり、いきなり張力がかかってしまうため、ピアノ自体を痛める原因にもなります。

グランドピアノ 弦とハンマー

調整に関しても、鍵盤やピアノ内部の部品は木材からできているものが多く、温度や湿度によってどうしても膨張、あるいは収縮してしまいます。
これにより鍵盤部の木が膨らんだり、反ってきつくなり戻ってこなくなったり、ピアノ内部の部品の動きが悪くなり、連打したときに上手く連打できず音が抜けてしまったりということがでてきます。
このままの状態で使い続けると、正しくない音程を覚えてしまったり、内部の部品に負担がかかり壊れてしまったりと、最終的にはピアノ自体の寿命を縮めてしまうことにもつながってしまいます。
そうならないためにも、ご自身のピアノの状態にあわせて今回は一年に一回の調律ではなく、半年に一回にしたりとお使いのピアノにあわせた調律周期で、調律、調整をしてあげることが必要になってきます。

また、日本には四季があるため、季節によって温度や湿度が異なります。 特に梅雨の時期は湿度が70~80%、冬場は逆に湿度が20~30%近くまで下がってしまいます。 ピアノ自体の理想の温度は15~25℃、湿度は約50%前後といわれていますから、これらの季節による急激な変化はピアノ内部の部品への影響が大きくなってしまいます。 ですので、季節の変わり目は音や調整がとても狂いやすくなります。 毎年定期的に調律をしていてもそういった季節の温度、湿度変化によって狂いやすくなってしまうため、その時の温度や湿度の状況に応じてエアコンや、加湿器、除湿器を使い、理想的な温度、湿度を目指すと音や調整が安定しやすく、ピアノを長持ちさせることにもつながります。 ただし、これ以外にも床暖房や、室内に洗濯物を干したりなど、気付きづらいですが、ピアノにとってよくない影響をあたえてしまうものもありますので注意が必要です。

最後に、ピアノには経年による部品の劣化と、使うことによって生じる部品の摩耗があります。これらのどちらか、もしくは両方が当てはまる場合は、調律や調整をしても、弾きづらさや音色のばらつきがでてきてしまいます。
ピアノを購入した当初は部品も新品であるため、調律で音程をそろえたり、調整で弾きやすさを整えてあげるだけでよいのですが、経年や摩耗により部品が劣化してきてしまうと部品の修理、交換が必要になってきます。

症状によって修理、交換する箇所は異なりますが、例えば、音色のばらつきに関しては鍵盤を押すことにより内部の部品が動き、最終的にハンマーという部品がピアノ弦を打つことにより弦を振動させて音がでています。 
ですが、弾けば弾くほどこのハンマーと呼ばれる部品が摩耗していきます。 正確には、ハンマーという部品の頭部分に羊毛フェルトが使われているのですが、この羊毛フェルトに弦の形の溝がついてしまうため、弦を打った際にその溝によって弦の振動が弱まってしまいます。
これにより、よく使われていて弦の溝が深くついているところと、そうでないところの音色に違いがでてきます。
音色をそろえるためには、この羊毛フェルトを溝がなくなるまで削り、当初と同じ形に整えてあげることが必要になります。この作業をハンマーファイリングとよびます。

これと同様に、ピアノ内部にあるセンターピンという部品も、どのピアノにも共通して使われています。
このセンターピンは様々な部品を動かすための関節部分になっているため、これが経年劣化、摩耗、温度、湿度変化などによって動きが悪くなると、鍵盤を押したときに重く感じてしまう、鍵盤が戻ってこない、連打しても音が抜けてしまう、などの症状がでてしまいます。
この場合は、いま使われているセンターピンという部品を抜いて、新しいものに交換する必要があります。 この部品はピアノによってサイズが違い、一つの鍵盤につき3本使われているため、その一つ一つを確認しつつ、交換、調整していく作業になります。

このように、使用状況によりどの部品の修理、交換が必要になるかは異なってきますが、必要に応じてこれらを直して調律、調整をすることで、お使いのピアノをこれからも長く使っていくことができます。

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